絶滅危惧・風景 - BreakerProject.net

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都市の中心部にありながら昔ながらの町並みや人情、昭和のたたずまいが残るまち。その失われつつあるまちの風景に介入、作品化するプロジェクト。8月からアーティストのリサーチ、制作をスタートし、2011年2月26日より大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室にて展覧会を開催します。

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レポート:西尾さん「家族の制服」シリーズ撮影

西尾さんの作品「家族の制服」シリーズがいよいよ完成!

まずは、カメラの位置決め。   
まずは、カメラの位置決め。   

何度も当時の写真と見比べます。
何度も当時の写真と見比べます。

新世界の地域の方たちより、7枚の写真をお借りすることができ2月13日~16日にかけて、「家族の制服」シリーズの撮影を行いました。

8月からのリサーチ。新世界の中で撮った写真と限定することで、思ったよりも苦戦。
11月には作品にする写真をピックアップ。交渉。
年明けより、新世界市場内の空き店舗を使用して本格的に制作を始動。
西尾さんは、毎週ごとに大阪と東京を移動。
学生やサポートスタッフ、地域の女性会の方たちに協力してもらい、再現服が完成しました。

そして、「新世界・節分仮装行列」でのお披露目を経て、いよいよ本番!
数十年前の家族写真を同じ場所、同じ装い、同じメンバーで再現する「家族の制服」シリーズの撮影です。

撮影期間には、再現服の制作にも大いに協力してくださっていた、西尾さんのお母さんが参加。
服のひだ、足の向き、鞄の膨らみ…さすが、アーティスト西尾美也の母!昔の写真の再現へのこだわりはすごいです。

と言うのも、4年前にこのシリーズ誕生のきっかけにもなった西尾さん家族の「家族の制服」。
モデルとなって登場しているお母さんは、自分のちょっとしたポーズに納得がいってなく、いまでも惜しいそう。その思いが、今回の撮影へ注がれているのです!

撮影は、寒さの厳しい中、Tシャツなど真夏の格好もあり、登場されるまちの方たちには、過酷な状況ではありましたが、雨・雪を避けることができ、無事終了。

撮影をしていて気付いたことは、再現した洋服、仮装行列のときに参加者の人たちが着用していたときは、題名通り「仮装」で、違和感たっぷりに映っていたのに、なんと当時の写真の本人たちが着用すると、妙にしっくり。

4~50年の月日が経っているのですが、その表情には面影があり、「当たり前と言えば、当たり前」なのですが、その事実が時の積み重ねの重みとして、ジーンと沁みわたってきます。
それは、忠実に再現された装いや同じ場所にいま立っているということで、余計に感じることができているのかもしれません。

そして、今回協力してくださった方たちからも、嬉しい感想。
「楽しい時間を過ごせました。ありがとう。」
「こんなにも1枚の写真から語ることができるとは驚き。」
「(撮影中)当時の気持ち、思い出してきた!」
「こんな機会がないと、なかなか新世界に足を運べなかった。15年ぶりに再会できました。」

最後の方は、元同僚同士の写真の再現の方。
わざわざこの寒い時期に、当時の写真を床屋に持参して、普段は七三の髪型をほぼ丸坊主に近いほど短く切って挑んでくださった。
もちろん、こちらからそこまでお願いしたわけではないのだが、それほどまでにこの作品に協力しようとしてくださる、その思いが嬉しい。

こうやって、たくさんの人の思いが込められた「家族の制服」。
いよいよ今週土曜日26日から公開です。


現代芸術創造事業
Breaker Project「絶滅危惧・風景」
■会期日程:2011年2月26日(土)~3月21日(月・祝)※毎週水曜日休館
■会場:大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室
大阪市中央区南船場3-4-26 出光ナガホリビル13階(旧出光美術館大阪)

※詳細は→ こちら

西尾美也

1982年奈良県生まれ、 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程在籍中
装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目し、市民や学生との協働によるプロジェクトを国内外で展開する。2009年には西尾工作所ナイロビ支部を設け、アフリカでのオルタナティブなアートプロジェクトに着手している。近年の主な展覧会に2008年「日常の喜び」水戸芸術館現代美術センター(茨城)、2009年「コスチューム・イン・プレイ」松本市美術館(松本),「From Laboratory to Project」New Museum Weimar(ドイツ),「越後妻有アートトリエンナーレ2009」(新潟),「ESTUAIRE2009」 Saint-Nazaire(フランス),「Self Select in Nairobi」RaMoMA (ナイロビ)、2010年「レゾナンス共鳴」サントリーミュージアム[天保山](大阪),「『Overallプロジェクトinナイロビ』帰国報告展」AITルーム[代官山] (東京),など多数。
http://yoshinarinishio.net/

下道基行

1978年岡山県生まれ、2001年武蔵野美術大学造形学部油絵科卒業
日常に潜む創造的な営みを再編集し作品化していくことで身の回りで見過ごされている価値を掘り起こしていくアーティスト。代表的な作品として、2005年に発行された写真集『戦争のかたち』(リトルモア発行)や『日曜画家/Sunday Painter』など、フィールドワークという手法で作品を制作する。2007-2008年Cite International des Arts 滞在 (フランス/パリ)、2010-2011年Tokyo wonder site Aoyama 滞在中 (東京/青山)。近年の主な展覧会に2009年「Air/空」梅香堂(大阪),「第一回 所沢ビエンナーレ美術展『引込線』」 西武鉄道旧所沢車両工場(埼玉)、2010年「RIDER HOUSE」Mac AOMORI(青森)・かじこ(岡山) , 「日曜画家/Sunday Painter」水戸芸術館クリテリオム79(茨城),「TOKYO PHOTO 2010」(東京),「岡山美の回廊」岡山県立美術館(岡山),「共鳴する美術」倉敷市立美術館(岡山),など多数。
http://m-shitamichi.com/

絶滅危惧・風景

2009年度に引き続いて「失われつつあるまちの風景」に焦点をあてたプロジェクトを実施します。今回も作品の舞台となる、新世界、西成(山王・飛田・太子)地域は、都市の中心部にありながら、昔ながらの町並みやコミュニティなど、昭和のたたずまいが残っていますが、建物の老朽化や住民の高齢化などの理由により、この数年で急速に様変わりすることが予想さるエリアです。その失われつつあるまちの風景をアーティストが地元住民と制作プロセスを共有しながら作品化していきます。また、今年度は市民に開かれた新たな美術館の在り方を探る大阪市立近代美術館(仮称)と連携し、心斎橋展示室にて2009年度の参加アーティストの作品とともに展示する予定です。

  • *主催:大阪市
  • *助成:財団法人地域創造/財団法人文化・芸術による福武地域振興財団
  • *協力:新世界町会連合会/新世界市場商業協同組合/通天閣本通商店街/ジャンジャン横丁/豊年食品株式会社/新世界援隊/山王社会福祉協議会/社会福祉法人山王みどり会/山王女性会/山王連合振興町会/飛田連合振興町会/飛田地区商店街連合/飛田新地協同組合/飛田新地料理組合/大阪電気通信大学/他作品制作等に協力いただいた皆様(順不同)
  • *企画・運営:ブレーカープロジェクト実行委員会/(財)大阪城ホール文化振興部
  • *プログラムディレクター:雨森信 *事務局:松尾真由子/的場久実
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