“アー”ツクール つれズレなるまま - BreakerProject.net

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地域に根ざした作品、活動、しくみを生み出すアートプロジェクトの実験
「まちが劇場準備中」

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レポート:オープンミーティング02/午後の部 『散歩』

写真1 写真2 写真3 午前の部の勉強会のあと昼食をとり、午後からは美術家の小山田徹さんのナビゲートで新世界・山王・飛田を中心に散歩を行いました。

藤さんは、何をする時も「誰と」するかで全然違った体験になり、同じまちでも誰と歩くかによって、今まで気づかなかったことに気づくことができると言います。
フィールドワーク初日も、みんなでまちを歩いたのですが、藤さん曰く「散歩の達人」である小山田さんと歩くことで、また違ったアイデアが生まれたり、新しい発見があるかもしれません。

小山田さんの考える散歩の極意は、たくさんの人と話しながらだらだら歩くこと。
話すことでランダムな情報と記憶がセットになり、だらだら歩くことで覚え易いのだそうです。確かに友人と話しながら歩いた風景はよく記憶していたりする経験があります。
小山田さんはこれまでにいろいろなまちを散歩されてきたようですが、最近では特に洞窟歩きを沢山されているようです。自分の懐中電灯だけが頼りの暗闇の中で空間を覚えるには、複数の人間との共通体験が重要なのだそうです。

そんな話を伺ったあと、散歩に向かいました。
まず、新世界市場にある元煮豆屋さんで、プロジェクト拠点候補の空き店舗見学からスタート。(写真)
プロジェクトを進めていくにあたり、やはり地元に拠点がほしいということで市場の方に紹介していただいた場所です。
お店は約20年前には閉められたそうですが、中にはまだ大きなお鍋がそのまま残っていたり、業務用のガス台があったり、当時の面影を残しています。
建物自体は3階建てで、1階部分は店舗、2・3階は住居スペースになっており、部屋数もたくさんあります。もしここが拠点となったら…夢は広がります。

その後、通天閣3階→ジャンジャン横丁→山王町→飛田と歩き、小山田さんが気に入った場所に移動。それは、西成区と阿倍野区との境界線で高い段差があり、塀のようになっている石垣の階段を登ったところ。ここから見る夕日がとてもきれいなのだと、案内してくださいました。
あいにく日暮れまでにはまだ時間があり夕日を眺めることはできなかったのですが、そこからまちを見下ろしていると、昔からそんなには変わっていないだろう場所もたくさんあるので、どこに行っても同じような表情のまちが多くなってしまった現在、やはりここは都会の真ん中にありながら、不思議なまちだな~と実感できます。

暑さが少しでもましなようにと15時からの散歩でしたが、まだまだ日差しはきつく、2時間ほど歩いたのですが、みなさんヘトヘトになっていました。
今日は定員を超える盛況ぶりで、みんなで小山田さんの話を聞きながらという訳にはなかなかいきませんでしたが、最初にあったアドバイスで、皆さんそれぞれにお話をしながら歩いておられました。
散歩後の感想では、「区画、区画で顔が変わる」「歩ける範囲内にまちの表情の違い」「現実としての多様性」「目に見えないことが露骨に見える」など、散歩直後の興奮冷めやらぬ意見が飛び交いました。

藤さんは、「露出の健全さ」と言います。臭いや生活の音も消え去っている現代。それは、排除の無理感、ゆがみとも言い換えられます。人間が生きていくうえで当たり前に存在するものがむき出しに存在していることの「健全さ」。それを必要としている人たちがどこかにいるかもしれない、そういうアクセスを作っていくこと。外からの者として、どう関わっていくかデザインするのだと…。

私がプロジェクトに関わり、まちに関わり、数か月が過ぎようとしています。
ようやくこの辺の地図も頭に入りだし、地区ごとの雰囲気も掴むことができてきました。しかし、まちと一言に言っても、そこに住む人々がいて、生活の営みがあり、歴史があり、
多種多様な価値観が存在するわけです。
小山田さんの散歩後に仰った「呆れるほど自分の知らない世界」という言葉が、とても現実感をもって感じることができました。
小山田さんが仕事などでよそのまちに関わるとき思うのは、そのまちから学ぶ感覚なのだそうです。自分たちが他人のまちに来て“何かできる”はおこがましい。アートによって速効的なものをする必要はなく、そういう感覚をもてる大人を増やす長期的な気持ちでおられることを知りました、藤さんや小山田さんのアートやまちや人に対する向き合い方の真剣さや謙虚さや温かさが私の心に響きました。

今日は、この地域の歴史を勉強し、実際にまちを歩く、とても有意義な時間だったと思います。最後に小山田さんからも提案がありました。それは、他の人が散歩しながら話してる会話の録音を聞きながら、その同じ道を歩き、追体験する「聞き耳」というワークショップ。他者の歩みに合わせるのはなかなか難しいらしく、今までにない体験ができそうで面白そうです。
次回のオープンミーティングでは、いよいよ具体的なアイデアが参加者から発表の予定!プロジェクトとの本格稼働となりそうです。


藤さんのブログでもレポートがアップされています

藤 浩志

アートの概念を美術史の中に位置づけるのではなく、「社会的に価値を認められていない存在(意識)を特別な存在として立ち上げるテクノロジー」として捉え、「地域資源、適正技術、協力関係」を活用した提案(デモンストレーション)型の表現活動を試みる。地域社会における対話と実験の現場をデモンストレーションという手法で立ち上げ、そこから発生するイメージの連鎖を重要視する。
http://www.geco.jp/
long interview [log-osaka]

まちが劇場準備中

2008年度は、ナビゲーターに美術家・藤浩志を迎え「地域に根ざした作品、活動を生み出す」ための実験として、約半年かけて新世界、西成周辺のフィールドワークを行います。そこから様々な「ズレ」を発見しつつ、対話を重ねることで立ち上がってきたプロジェクトを、まちを舞台に展開します。「まちを劇場にみたててシーンをつくっていく」また「日常の面白さをシーンとして再発見していく」そして、このプロジェクトはイベントではなく、「次につながっていくプロセス」ということで、タイトルは「まちが劇場準備中」。

  • *協力:(財)西成区コミュニティ協会/大阪市立デザイン教育研究所/大阪芸術大学教職員組/新世界町会連合会/新世界市場商業協同組合/通天閣本通商店街/ジャンジャン横丁/山王社会福祉協議会/山王女性会/山王連合振興町会/飛田連合振興町会/飛田地区商店街連合/飛田新地協同組合/飛田新地料理組合/通天閣観光株式会社/豊年食品株式会社(順不同)
  • *主催:ブレーカープロジェクト実行委員会/大阪市
  • *助成:(財)地域創造
  • *企画:雨森信
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